おくしば眼科

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診療内容

裂孔原性網膜剥離

・裂孔原性網膜剥離とは
網膜は、眼底と呼ばれる眼の奥一面に広がっている薄い膜状の組織です。眼の中に入った光が映し出される所で、カメラのフィルムに相当します。その網膜の亀裂や孔を「網膜裂孔」といい、「網膜剥離」の主要な原因です。
網膜剥離とは、網膜が眼底から剥がれてしまう病気です。正確にいうと、網膜は 感覚網膜という光を感じとる層と、その土台となっている色素上皮色素上皮と呼ばれる層があって、感覚網膜が網膜色素上皮から剥がれるのが網膜剥離です。
感覚網膜の外層の細胞(視細胞など)が必要としている栄養は、網膜の外側の脈絡膜から色素上皮を経由して供給されています。網膜剥離のために栄養補給が途絶えると、感覚網膜の光に対する感度が低下してしまいます。網膜剥離が起きると、視野や視力に影響が現れます。

・網膜裂孔のでき方

1中高年者の場合:加齢による硝子体の変化

眼球の内部は「硝子体」という透明なゼリー状の組織で満たされていて、網膜はその硝子体の表面と接しています。年齢とともに硝子体は少しずつ液体に変化し、 ゼリー状の液体の中に空洞ができ(液化変性)、その容積が減っていきます。硝子体の液化が進行すると、硝子体と後方の網膜が離れてすき間ができます。これは、60歳前後に多くみられ、「後部硝子体剥離」といいます。
この現象は加齢変化による生理的なものです。しかし後部硝子体剥離が生じる際に、硝子体と網膜が強く癒着している場合、または、網膜が弱くなっている場合には、収縮する硝子体に引っ張られて網膜が引き裂かれ、亀裂や孔、つまり網膜裂孔ができることがあります。 後部硝子体剥離は50歳以降に生じることが多いので、このメカニズムによる網膜裂孔は中高年者に起こります。

  • 若いときは眼球内部が硝子体で満たされている
  • 年齢とともに硝子体が収縮し、
    後部硝子体剥離が起きる
  • その際、網膜と硝子体の癒着が強いと...
  • 網膜裂孔ができることがある

1若い人の場合:強い近視や眼の外傷

近視の度が強い人は、眼球の長さが通常より長いため、眼球の壁も薄くなり、網膜に薄く変性した部位ができることがあります。このような薄い網膜が萎縮して、円孔ができることがあります。
このメカニズムによる網膜裂孔は、比較的若い人に多くみられます。このほか、スポーツや事故で眼球を打撲すると、網膜裂孔が生じることもあります。

  • 正視
  • 近視では、網膜の面積が広がり、
    網膜が薄くなって円孔ができる
・網膜裂孔の治療
網膜裂孔の一部は網膜剥離に進行します。
網膜剥離に進む可能性が高いと考えられる場合、その進行を食い止めるためにレーザー光凝固治療を行い、裂孔周囲の網膜に瘢痕を作ります。 凝固によってできた傷は治る過程で瘢痕となり、感覚網膜と色素上皮を癒着させます。これにより 網膜剥離へ進行する確率が低くなります。しかし、凝固後に瘢痕ができるまでに数週間かかりますし、瘢痕ができてからでも剥離する可能性もあるので、経過観察は大切です。
・網膜裂孔が網膜剥離に進むとき (感覚網膜の下の水分が剥離を拡大)
網膜裂孔がある眼球の内部には、硝子体が液化した水分があり、網膜裂孔から感覚網膜の裏側(色素上皮との間)に入り込もうとします。 いったん水分が入り込むと、眼を動かした時などに、感覚網膜を剥離するように働きます。網膜裂孔の位置や大きさ、入り込んだ水の量、運動が激しいなどの条件次第で、網膜剥離の進行の程度が異なります。
・網膜剥離の症状
網膜剥離が起きると、飛蚊症が悪化します。
また、剥離した網膜は感度が低下するので剥離部分に対応する視野が見えなくなる「視野欠損」を生じます。
網膜剥離が黄斑まで広がると、視力が急に低下し、物がゆがんで見える「変視症」を生じることもあります。

・裂孔原性網膜剥離の治療

1眼球の内側から修復する「硝子体手術」

硝子体を切除し、眼球内の液体を空気に置き換え、剥離した網膜を外側の色素上皮に接着させます。そして裂孔の周囲をレーザーなどで凝固します。網膜の復位と固定をしたあと、眼球内の空気を吸収の遅いガスに置換します。固定がまだ不安定な手術直後の数日間は、ガスが剥離部分に当たる姿勢を保ちます(頭位制限)。

1眼球の外側から修復する「強膜内陥内陥術」

網膜裂孔のある強膜の外側にシリコンスポンジを縫いつけ、眼球を内側にへこませて感覚網膜と色素上皮のすき間を縮めます。そうすることで硝子体の牽引を弱め、裂孔・剥離部分を凝固し、復位・固定します。感覚網膜の下に水分が多量に溜まっている場合は、強膜に穴を開けて水分を排出し、網膜の復位を助けます。硝子体手術と同様に、 眼球内にガスを注入する方法を併用することもあります。